実践キャリアネット

【会員コラム-No.19】(キャリアネット通信2024-No. 2)

今月は会員の食品成分表に関するコラムです。

「食品成分表の今昔」

本稿では食品分析の教科で使用されてきた「食品成分表」と「食品分析法(永原太郎著)」について述べます。
食品成分表は学校教育の場で広く使用されてきたので、だれもが一度は手にしたことがあるでしょう。

食品成分表は日本では1950(昭和25)年に食品数538、成分項目数14で公表されています。その後、改定が続けられ、2020年版(八訂)は食品数2478、成分項目数54で公表されています。更に、2020年版では炭水化物成分表編、アミノ酸成分表編、脂肪酸成分表編が別冊として公表されました。 エネルギー計算に重要な炭水化物分析に注目してみると、現在に至るまで、食品成分表は「差し引き法」を採用しています。すなわち、炭水化物量は水分、たんぱく質、脂質、灰分の含量%を100%から差し引いたものとし、成分表の糖質は「差し引きによる炭水化物」からさらに繊維の量を引いた「差し引きの糖質」です。

「食品分析法」で永原先生は食品成分表がこの差引き方式を採用している理由と課題を次のように記しています。

「単に成分の和が100%になるようにという配慮からのみでなく、一般的に食品の糖質定量値が上にあげた他の5成分の定量値より精度が低くなりがちなことに起因している。多くの食品について、糖質の直接定量値よりも、上のような差引計算値の方が真実に近いと考えられている。しかし、糖質の量のみを知りたいときに、つねに他の5成分を定量することはわずらわしい。しかも、定量を妨害する共存物が少なく、糖質をその主成分とするような食品、たとえば砂糖、水あめ、はちみつ、でんぷん類、菓子、さらにはいも類、穀類、果実などでは直接糖質を定量する必要がしばしば起こる。」

この永原先生の指摘は2020年版炭水化物編において、炭水化物量と共に細分化された糖質組成成分値が公表されたことに繫がっています。例えば、はちみつの場合、ぶどう糖、果糖、しょ糖、麦芽糖の分析値が掲載されています。日本の食品成分表は炭水化物量にこの方式を採用したことでバランスのとれた明晰明解な成分表になりました。

さらに、2020年版では成分データの活用や国際的な情報交換を推進するために、デジタル化し、和文・英文の両方で公開されています。 食品成分表は国際的に各国でお国柄を尊重し作成されています。世界の平和が維持され食糧に由来するエネルギーを分かち合って豊かな食生活が営まれることを願うところです。(EG)