科会だより
日時 | 2013年6月6日(木) |
13時~14時30分(後 懇親会あり) | |
場所 | 桜会館1F101~103号室 |
出席者 | 47名 |
座・高円寺「リア」公演(5月 17日~26日)の25日(土)に実践ときわ会より67名の方が観劇しました。私たちの同窓生で舞台、映画、テレビでご活躍の渡辺美佐子さんのリア王と、 男性役者お二人と1時間20分、休憩なしの熱演でした。
その熱気も冷めやらぬ6月6日に渡辺美佐子さんをお迎え し、講演会を開催致しました。
ご自身で車を運転されて、才とは思えぬ若さと率直で飾ら ないお人柄で、色々なお話を伺いました。以下にその概要を纏めました。
- 実践では、学校に頼み校庭の下田先生の記念碑の近くに テニスコートを自分達で整地。 阿原先生と友人3人でテニスに励む毎日でした。
- 中学時代はバイオリンを習い、先生はお父上が電車内で見かけた音大生に依頼しましたが、
それはなんとあの「芥川也寸志さん」でした。
学校でコーラスのコンクールに出場するため、バイオリンを習っている渡辺さんが指揮する事になり、これ また芥川さんに教えて戴きました。曲目は「ハレルヤコーラス」と「ドナウの漣」でした。結果は優勝です。
後年、ブルーリボン女優助演賞を受賞した時に(1958年)、芥川さんも同時受賞されてて、再会いたし ました。 - 卒業後 俳優座養成所に入りました。
特にその道を目指していたという訳ではありませんが偶然が重なりました。
小学生の頃、長野県の篠ノ井に疎開。都会の子は革靴を履いていることなどでいじめ不登校になり、自宅で本を読み漁りました。兄3人姉1人の末っ子で家には いろいろの本があり、これがその後の自分を作ったのかもしれません。
その姉が俳優の信欣三さんのファンでした。ある時、私が三鷹から井の頭線で渋谷に行く時に、車内でブツ ブツと言うおかしな人がいると思いましたがそれが信欣三さんでした(台詞の練習でした)。そのまま後を付けたら六本木の俳優座に着き、養成所3期生募集の ビラを受け取ってしまいました。受験したところ合格。父親には内緒、母と姉の助けで卒業が出来ました。
同期生には映画「生きる」(黒沢明監督)に出た小田切みきさんがいます。卒業後2年で映画「ひめゆりの 塔」(今井正監督1953年)に出演。東映大泉のセット撮影で「お母さん」と死ぬ最後の台詞の時に、上からポタポタと熱いモノが落ちて来ました。照明の人 の汗です。集団で作る仕事とはこういうことと感動しました。
唯、こ のシーンのラッシュを今井監督と一緒に観て「これは嫌だ」と言いました。監督に「何が嫌か一週間考えて来い」と言われました。当時の沖縄の女学生はこんな にふっくらとした顔ではおかしいと思いました。痩せるため戦争中に男性が徴兵逃れに醤油を飲んだと兄から聞き実行しましたが、とても飲めるもではなく断食 をしました。親に心配をさせないために、食事時は外出をしていました。一週間では痩せはしませんでしたが目がくぼみ、撮り直しで監督に「目の光が良かっ た」と言われました。
後に今井監督の映画「武士道残酷物語」(1963年)に出演し た時に「良い女優になったね」といわれました。
養成所卒業後に入った「新人会」の頃は、劇団の資金稼ぎのため小沢昭一さんと5年間で70本の映画に出 ました。
4. 毎年夏に朗読劇「この子たちの夏 1945ヒロシマ
ナガサキ」に28年間出演していましたが、今は朗読劇「夏の雲は忘れない」で全国を巡回しています。
女優6名と地元の子供たちの出演です。会場、チケット販売などは女優さんの手弁当です。
原爆関係の舞台に立ち続ける原点になる想い出があります。渋谷の日赤病院の近くに住んでいたタツオ君 が12才で広島のあの日に223名の仲間と共に跡形もなく消えてしまったのです。そのことを知ったのはタツオ君のご両親から伺った35年後のことでした。 以来、広島の原爆記念公園の墓碑銘に刻まれているお名前に手を添えています。
5(出演されて 印象に残る舞台は?という質問に)
- 「マリアの首」(作・田中千禾夫1959)
- 「オッペケペ」(作・福田善之1979)川上音二郎の妻お良の役
- 「魔女傳説」(作・福田善之1969)大逆事件を題材
- 「小林一茶」(作・井上ひさし1982)
「化粧」(作・井上ひさし1982)28年間出演、精神的にきつかった。
今は芸術的なものは受け入れられ難い時代になっています。井上ひさしさん、坂手洋二さん、齋藤燐さんた ちが渡辺美佐子主演を前提でお芝居を書いて頂いたが、新作でもあり難しい面が数多くありました。私には賭けでしたが後悔はしていません。
6. 2年前に「リア」を女性が演じることになり、訳者の小田島雄志さんから「男ではなく人間であれば良い」とのアドバイスを頂きました。
(台詞を覚える ことに関しての質問に)
いつも、どこでも出る質問ですが、舞台、映画、テレビのどれにでも、リハーサルの時に台詞は暗記して入ります。覚えてこない若い人がいますが忙しいのでしょうね。
「リア」の台本70ページを3月10日に渡されて10ページを1週間で覚え、リハーサルまでに全部暗記しました。
(舞台で台詞を忘れることは?の質問 に)
常に恐怖との戦いですね。今まで4回あり文字通り頭が真っ白になります。
(汗でメイキャップが落ちるのでは?の 質問に)
ドーランはドイツ製で水には溶けません。(油性で落ちる)。
7 今後のこと
1. 来年の5月に同じ座・高円寺1で「リア」が再演されます
2. 渡辺美佐子の「女優 渡辺美佐子の戦争と初恋」がWOWOWで、8月16日に放映されます。(講演会当日の時点です)